清掃にまつわる千利休のエピソード。
ある日、息子の紹安(しょうあん)が露地を掃くのを眺めていた利休は、紹安が清掃を終えるやいなや、やりなおしを命じます。
「まだ、きれいになっていない」
父の言葉を聞いた紹安は、さらに一時間もかけて清掃をやりなおし、くたびれはてて利休に言いました。
「父上、もうこれ以上すべきことはなにもありません。飛び石は三度も洗いましたし、灯籠にも樹にもたっぷり水を打ちました。地面には小枝一本、木の葉も残していません」
しかし利休は、未熟者と言って紹安を叱りつけたのです。
「露地というものは、そのように清掃するものではない」
いきなり利休は庭におりて一本の樹をゆすり、金色や深紅に染まった木の葉を庭いちめんにまき散らしました。
利休は単なる清潔さだけではなく、自然な美しさを求めたのでした。