「商人の道 」
農民は連帯感に生きる。
商人は孤独を生甲斐にしなければならぬ。
總べては競争者である。
農民は安定を求める。
商人は不安定こそ利潤の源泉として、喜ばねばならぬ。
農民は安全を欲する。
商人は冒険を望まねばならぬ。
絶えず危険な世界を求めそこに、
飛込まぬ商人は利子生活者であり、隠居であるにすぎぬ。
農民は土着を喜ぶ。
大地に根を深くおろそうとする。
商人は何処からでも養分を吸い上げられる浮草でなければならぬ。
その故郷は住む所すべてである。
自分の墓所はこの全世界である。
先祖伝来の土地などと云う商人は、
一刻も早く算盤を捨てて鍬を取るべきである。
石橋をたたいて歩いてはならぬ。
人の作った道を用心して通るのは、
女子供と老人の仕事である。
我が歩む処そのものが道である。
他人の道は自分の道でないと云う事が商人の道である。